成功してもニュースにならない仕事――渋谷の地下で街を守る防災インフラ
作成者:
株式会社クリエイティブ・ラボ
更新日:2026-08-31 17:01
カテゴリー:
クリコラ 〜 CREATIVE LAND 建設コラム 〜
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株式会社クリエイティブ・ラボ
更新日:2026-08-31 17:01
成功してもニュースにならない仕事――渋谷の地下で街を守る防災インフラ
成功してもニュースにならない仕事――渋谷の地下で街を守る防災インフラ
「世界で初めて〇〇に成功」「過去最高〇〇を達成」――ニュースになる成功は、たいてい何かが起きた日です。
しかし、世の中には、成功してもほとんどニュースにならない仕事があります。防災インフラをつくり、支える仕事は、その代表かもしれません。
なぜなら、その仕事の大きな成果は、「何も起きなかった日」だからです。
しかし、世の中には、成功してもほとんどニュースにならない仕事があります。防災インフラをつくり、支える仕事は、その代表かもしれません。
なぜなら、その仕事の大きな成果は、「何も起きなかった日」だからです。
ニュースに映る被害、映らない備え
2026年8月22日の夕方、東京都では23区西部を中心に猛烈な雨が降りました。気象庁は「記録的短時間大雨」に関する情報を3回発表し、渋谷区にも浸水害を対象とする大雨警報が発表されました。[1][2]
このような日にニュースで伝えられるのは、浸水した住宅や冠水した道路、機能不全に陥った交通網など、実際に起きた被害です。被害を伝え、次の災害に備えるためにも、こうした報道には大切な役割があります。
その一方で、被害を防ぐために事前に行われてきた防災インフラの整備や、いつもどおり機能し続けている街の姿は、なかなかニュースには映りません。
防災インフラの成果は、写真や映像に残しにくいものです。何かが起きたことではなく、「起きなかったこと」の中に表れるからです。
このような日にニュースで伝えられるのは、浸水した住宅や冠水した道路、機能不全に陥った交通網など、実際に起きた被害です。被害を伝え、次の災害に備えるためにも、こうした報道には大切な役割があります。
その一方で、被害を防ぐために事前に行われてきた防災インフラの整備や、いつもどおり機能し続けている街の姿は、なかなかニュースには映りません。
防災インフラの成果は、写真や映像に残しにくいものです。何かが起きたことではなく、「起きなかったこと」の中に表れるからです。
渋谷の地下に潜む、巨大な水槽
渋谷は、周囲を坂に囲まれた谷地形の底にあります。高い場所に降った雨が駅周辺へ集まりやすく、過去には渋谷駅の地下街へ雨水が流れ込む被害も発生しました。[3][4]
渋谷駅東口地区では、1時間に75ミリの雨が降った場合にも、地下街への雨水の流入を防ぐための施設整備が計画されていました。しかし、駅前はビルが密集した市街地です。大規模な雨水貯留施設を単独で整備できる場所を確保することが難しく、必要性がありながらも、整備は容易ではありませんでした。[4]
その備えの一つとして、渋谷駅東口広場の地下約25メートルにつくられたのが「渋谷駅東口雨水貯留施設」です。
大雨の際に雨水を一時的に受け止める施設で、貯留できる量は約4,000トン。地上を歩いているだけでは、まず存在に気づかない巨大な防災インフラです。[3][4]
仕組みだけを説明すれば、「大雨を地下の水槽にためる施設」と簡単にまとめられます。
しかし、この施設の本当のすごさは、水槽の大きさだけではありません。
渋谷駅東口地区では、1時間に75ミリの雨が降った場合にも、地下街への雨水の流入を防ぐための施設整備が計画されていました。しかし、駅前はビルが密集した市街地です。大規模な雨水貯留施設を単独で整備できる場所を確保することが難しく、必要性がありながらも、整備は容易ではありませんでした。[4]
その備えの一つとして、渋谷駅東口広場の地下約25メートルにつくられたのが「渋谷駅東口雨水貯留施設」です。
大雨の際に雨水を一時的に受け止める施設で、貯留できる量は約4,000トン。地上を歩いているだけでは、まず存在に気づかない巨大な防災インフラです。[3][4]
仕組みだけを説明すれば、「大雨を地下の水槽にためる施設」と簡単にまとめられます。
しかし、この施設の本当のすごさは、水槽の大きさだけではありません。
約10年かけて、「何も起きない日」をつくる
渋谷駅東口雨水貯留施設は、2011年の着工から2020年の供用開始まで、10年近くをかけて整備されました。[5][6]
この課題を解決するきっかけとなったのが、渋谷駅周辺の大規模再開発です。渋谷駅東口では、土地区画整理事業の一環として地下広場の整備が計画されていました。そこで、関係機関が調整を重ね、地下広場と雨水貯留施設を一体的に整備することで、限られた駅前の地下空間に施設を実現する道が開かれました。[4]
建設場所は、鉄道と渋谷川に挟まれた渋谷駅前です。駅や道路を利用する人たちが行き交い、路線バスや鉄道が動き続けるなかで、駅の改良、道路整備、歩行者デッキのつくり替え、周辺のビル開発など、同時に進む複数の工事との調整を重ねながら、整備を進める必要がありました。[4][5][6]
施工では、土地区画整理事業の範囲内にある雨水貯留施設や取水管などを区画整理事業者が、その範囲外の取水管などを東京都下水道局が担当しました。さらに、地下広場などの工事と仮設物を共有し、互いの工程を調整しながら一体的に施工することで、早期の供用開始につなげました。[4]
つまり、乗り越える必要があったのは、地下に大きな空間をつくる技術的な課題だけではありません。用地の確保が難しい都心で再開発の機会を捉え、官民が役割を分担し、複数の工事を一つの工程として組み合わせることによって、初めて実現した施設だったのです。
その背景には、街を守るために人知れず力を尽くした多くの専門家がいます。
どこに、どのような施設をつくることが防災に有効なのかを検討し、緻密な計画を立てる人がいます。限られた空間で実現できる構造を考える人がいます。周辺の工事や交通への影響を調整する人がいて、実際に現場で施工する人がいます。
行政、鉄道事業者、開発事業者、設計者、施工者など、それぞれ異なる立場と専門性を持つ人たちが、長い時間をかけて一つの施設を形にしていきました。
これは、地下に巨大な水槽をつくる工事であると同時に、「動き続ける渋谷を止めずに、これからの街を守る」という仕事でもあったのです。
この課題を解決するきっかけとなったのが、渋谷駅周辺の大規模再開発です。渋谷駅東口では、土地区画整理事業の一環として地下広場の整備が計画されていました。そこで、関係機関が調整を重ね、地下広場と雨水貯留施設を一体的に整備することで、限られた駅前の地下空間に施設を実現する道が開かれました。[4]
建設場所は、鉄道と渋谷川に挟まれた渋谷駅前です。駅や道路を利用する人たちが行き交い、路線バスや鉄道が動き続けるなかで、駅の改良、道路整備、歩行者デッキのつくり替え、周辺のビル開発など、同時に進む複数の工事との調整を重ねながら、整備を進める必要がありました。[4][5][6]
施工では、土地区画整理事業の範囲内にある雨水貯留施設や取水管などを区画整理事業者が、その範囲外の取水管などを東京都下水道局が担当しました。さらに、地下広場などの工事と仮設物を共有し、互いの工程を調整しながら一体的に施工することで、早期の供用開始につなげました。[4]
つまり、乗り越える必要があったのは、地下に大きな空間をつくる技術的な課題だけではありません。用地の確保が難しい都心で再開発の機会を捉え、官民が役割を分担し、複数の工事を一つの工程として組み合わせることによって、初めて実現した施設だったのです。
その背景には、街を守るために人知れず力を尽くした多くの専門家がいます。
どこに、どのような施設をつくることが防災に有効なのかを検討し、緻密な計画を立てる人がいます。限られた空間で実現できる構造を考える人がいます。周辺の工事や交通への影響を調整する人がいて、実際に現場で施工する人がいます。
行政、鉄道事業者、開発事業者、設計者、施工者など、それぞれ異なる立場と専門性を持つ人たちが、長い時間をかけて一つの施設を形にしていきました。
これは、地下に巨大な水槽をつくる工事であると同時に、「動き続ける渋谷を止めずに、これからの街を守る」という仕事でもあったのです。
完成してからも、仕事は続く
防災インフラは、完成すれば終わりではありません。
実際に大雨が降るのは、完成した翌日かもしれませんし、何年も先かもしれません。必要なときに役割を果たせる状態を保つため、完成後も維持管理が続けられます。[3][4]
また、街を守っているのは、この雨水貯留施設だけではありません。
河川や下水道の整備、建物への浸水対策、警報、避難誘導など、さまざまな対策が重なり合って被害の拡大を防いでいます。[7]
そのため、8月22日の豪雨で被害が出なかった、あるいは小さく抑えられた場所があったとしても、それをこの施設だけの効果と断定することはできません。
雨の降り方や場所も違えば、街に施された対策も一つではないからです。
それでも、一つひとつの防災インフラを計画し、つくり、使える状態に保つ仕事が積み重なることで、災害に強い街になっていくのです。
実際に大雨が降るのは、完成した翌日かもしれませんし、何年も先かもしれません。必要なときに役割を果たせる状態を保つため、完成後も維持管理が続けられます。[3][4]
また、街を守っているのは、この雨水貯留施設だけではありません。
河川や下水道の整備、建物への浸水対策、警報、避難誘導など、さまざまな対策が重なり合って被害の拡大を防いでいます。[7]
そのため、8月22日の豪雨で被害が出なかった、あるいは小さく抑えられた場所があったとしても、それをこの施設だけの効果と断定することはできません。
雨の降り方や場所も違えば、街に施された対策も一つではないからです。
それでも、一つひとつの防災インフラを計画し、つくり、使える状態に保つ仕事が積み重なることで、災害に強い街になっていくのです。
誰にも気づかれないことが、仕事の成果になる
防災インフラによって守られた人が、自分が守られたことに気づく機会は、あまり多くないかもしれません。
防災インフラを計画した人や、設計した人、工事をした人、完成後に管理している人の名前を知ることも、きっとないでしょう。
ニュースに名前が出るわけでも、街を歩く人から感謝されるわけでもありません。
それでも、会ったこともない多くの人が、明日もいつもどおり駅を使い、働き、家へ帰れるように、何年も先回りして街をつくる人たちがいます。
自分の仕事が目立つことよりも、誰かの何気ない日常を支えることに誇らしさを感じられるのなら、建設の仕事は、あなたにとってとても魅力的な選択肢かもしれません。
次に渋谷の街を歩くときには、目に映る建物やスクランブル交差点だけでなく、その地下にある備えと、それを支える人たちにも思いを向けてみてください。
成功してもニュースにならない仕事は、私たちの足元で今日も続いています。
防災インフラを計画した人や、設計した人、工事をした人、完成後に管理している人の名前を知ることも、きっとないでしょう。
ニュースに名前が出るわけでも、街を歩く人から感謝されるわけでもありません。
それでも、会ったこともない多くの人が、明日もいつもどおり駅を使い、働き、家へ帰れるように、何年も先回りして街をつくる人たちがいます。
自分の仕事が目立つことよりも、誰かの何気ない日常を支えることに誇らしさを感じられるのなら、建設の仕事は、あなたにとってとても魅力的な選択肢かもしれません。
次に渋谷の街を歩くときには、目に映る建物やスクランブル交差点だけでなく、その地下にある備えと、それを支える人たちにも思いを向けてみてください。
成功してもニュースにならない仕事は、私たちの足元で今日も続いています。
参考資料・ニュース
[1] 令和8年8月22日の大雨に関する東京都気象速報
公開元:東京管区気象台
公開日:2026年8月26日
URL:https://www.data.jma.go.jp/tokyo/shosai/chiiki/disaster/2026/20260822_sokuhou.pdf
参照日:2026年8月27日
使用箇所:8月22日の東京都の大雨、記録的短時間大雨に関する情報の発表回数。
[2] 気象情報 気象庁 8月22日16時53分発表 大雨警報・注意報
公開元:渋谷区公式X
公開日:2026年8月22日
URL:https://x.com/city_shibuya/status/2091071242359263483
参照日:2026年8月27日
使用箇所:渋谷区における浸水害を対象とした大雨警報。
[3] 渋谷をまもる雨水貯留施設
公開元:東京都下水道局
公開日:2020年8月27日
URL:https://www.koho.metro.tokyo.lg.jp/diary/report/2020/08/25/01.html
参照日:2026年8月27日
使用箇所:過去の渋谷駅地下街の浸水、施設の位置・容量・役割、整備と維持管理。
[4] 渋谷駅周辺大規模再開発と連動した官民連携による雨水貯留施設の整備
公開元:東京都下水道局『技術調査年報 2021 Vol.45』
公開年:2021年
URL:https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/gesui/y-1-1-2_ab_2021-Vol-45
参照日:2026年8月31日
使用箇所:渋谷の谷地形、1時間75ミリ降雨への対策計画、ビルが密集する市街地での整備上の課題、施設の規模、再開発との一体施工、官民の役割分担、仮設物の共有と工程調整、維持管理。
[5] 「谷底」にある渋谷を集中豪雨から守る! 渋谷駅地下の「雨水貯留施設」供用開始へ
公開元:渋谷文化プロジェクト
公開日:2020年8月28日
URL:https://www.shibuyabunka.com/blog.php?id=1151
参照日:2026年8月27日
使用箇所:2011年から2020年までの工期、鉄道・渋谷川・駅利用者に配慮した施工条件。
[6] 渋谷駅東口雨水貯留施設の整備が完了します!
公開元:東急株式会社・独立行政法人都市再生機構
公開日:2020年8月19日
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000485.000010686.html
参照日:2026年8月27日
使用箇所:施設の規模、地上交通や鉄道駅への配慮、事業者・行政間の工事調整。
[7] 豪雨・土砂災害対策「大雨が降っても、あふれない・くずれない」
公開元:東京都政策企画局
公開年:2017年
URL:https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/seisakukikaku/honbun2_safecity_3-1-pdf
参照日:2026年8月27日
使用箇所:河川施設、下水道施設、まちづくりなどを組み合わせた総合的な浸水対策。
公開元:東京管区気象台
公開日:2026年8月26日
URL:https://www.data.jma.go.jp/tokyo/shosai/chiiki/disaster/2026/20260822_sokuhou.pdf
参照日:2026年8月27日
使用箇所:8月22日の東京都の大雨、記録的短時間大雨に関する情報の発表回数。
[2] 気象情報 気象庁 8月22日16時53分発表 大雨警報・注意報
公開元:渋谷区公式X
公開日:2026年8月22日
URL:https://x.com/city_shibuya/status/2091071242359263483
参照日:2026年8月27日
使用箇所:渋谷区における浸水害を対象とした大雨警報。
[3] 渋谷をまもる雨水貯留施設
公開元:東京都下水道局
公開日:2020年8月27日
URL:https://www.koho.metro.tokyo.lg.jp/diary/report/2020/08/25/01.html
参照日:2026年8月27日
使用箇所:過去の渋谷駅地下街の浸水、施設の位置・容量・役割、整備と維持管理。
[4] 渋谷駅周辺大規模再開発と連動した官民連携による雨水貯留施設の整備
公開元:東京都下水道局『技術調査年報 2021 Vol.45』
公開年:2021年
URL:https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/gesui/y-1-1-2_ab_2021-Vol-45
参照日:2026年8月31日
使用箇所:渋谷の谷地形、1時間75ミリ降雨への対策計画、ビルが密集する市街地での整備上の課題、施設の規模、再開発との一体施工、官民の役割分担、仮設物の共有と工程調整、維持管理。
[5] 「谷底」にある渋谷を集中豪雨から守る! 渋谷駅地下の「雨水貯留施設」供用開始へ
公開元:渋谷文化プロジェクト
公開日:2020年8月28日
URL:https://www.shibuyabunka.com/blog.php?id=1151
参照日:2026年8月27日
使用箇所:2011年から2020年までの工期、鉄道・渋谷川・駅利用者に配慮した施工条件。
[6] 渋谷駅東口雨水貯留施設の整備が完了します!
公開元:東急株式会社・独立行政法人都市再生機構
公開日:2020年8月19日
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000485.000010686.html
参照日:2026年8月27日
使用箇所:施設の規模、地上交通や鉄道駅への配慮、事業者・行政間の工事調整。
[7] 豪雨・土砂災害対策「大雨が降っても、あふれない・くずれない」
公開元:東京都政策企画局
公開年:2017年
URL:https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/seisakukikaku/honbun2_safecity_3-1-pdf
参照日:2026年8月27日
使用箇所:河川施設、下水道施設、まちづくりなどを組み合わせた総合的な浸水対策。
筆者情報
■氏 名:亀井 聡
■会 社 名:株式会社クリエイティブ・ラボ
■所属・役職:ディレクター
■企業ページ:https://creative-land.jp/company-detail/3
■コラム公開日:2026/08/31
■コラム更新日:2026/08/31
■会 社 名:株式会社クリエイティブ・ラボ
■所属・役職:ディレクター
■企業ページ:https://creative-land.jp/company-detail/3
■コラム公開日:2026/08/31
■コラム更新日:2026/08/31